2010/12/14

「人口減少社会と移民政策—ヨーロッパの成功と失敗に学ぶ」


昨日(12月3日)開催された笹川平和財団主催 「人口変動の新潮流への対処」事業
国際シンポジウム「人口減少社会と移民政策—ヨーロッパの成功と失敗に学ぶ」から(理解力が無いからか)学べず失望しました。

第1部トッド氏の講演
「日本と移民—ヨーロッパの成功と失敗から得られるいくつかの教訓」

トッド氏は導入で
・欧州では現在移民への問題だけがクローズアップされ不安などが広がっているが、移民は避けられず、必要なこと。
・これまで移民が欧州の経済を救ってきたことを忘れてはならない。移民をプラスに見よう。
と発言。これには同意するが、問題なく受け入れるのは具体的にどうするか。

また、田村氏の発言を受けて
・「同化」という言葉を避ける風潮があるが、移民もその国の人間と同じようになりたいと思っているはずであるので堂々と「同化」と言えば良いと発言。日本では殆どタブーのことをこれほどはっきり発言するのは坂中氏くらいか。自分の身を移民に置いてもこの「同化」という言葉を問題なく受け入れられるか。パターナリズムか・・

ところで講演の中心で、仏英独の家族の構造の違いを
・フランスは平等主義核家族(成人すると独立し平等。遺産は平等に分けられる。)
・英国は絶対核家族(成人になる前から家族を離れる。個人主義である。平等主義的ではない。)
・ドイツは直系家族(子どものうち長兄が親元に残る。兄弟は不平等。)と説明。

これらと移民の問題を結び付けても各国への移民は北アフリカ、トルコ、インド・・と異なることもあり、単純に受け入れ側の家族構造だけを中心に捉えることでは難しいのではないか。
最後にトッド氏から「日本も直系家族であり、直系家族であるドイツの移民政策を模倣すべき」
との短絡的な提案が出された。

時間が無かったために、説明を端折ったのかもしれないが、民族、風土、歴史、宗教観も異なるドイツと日本を単に直系家族だからといって重ね合わせる乱暴さには驚いた。
(直系家族というのは法律的には平等になっているが価値観が残っているということか?)
一体何をドイツから学ぶのか。
それにしてももう少し日本についての情報収集をして発言をしてほしいと思った。

同氏自身が
「このタイトルは笹川平和財団が決めたもので・・」と始めるほどで、田村氏の資料をみて始めて多くのことを知るようでは準備不足では無かったのか。

ミーハーとして聴きたかったのは、そのドイツの最近の動き、特に:
・前中央銀行理事ザラチン氏の反移民の著書が半年も経たないのに100万分も売れ今も人気があること
・メルケル首相が「多文化主義が間違っていた」と発言していることを分析し、
・何がいけなかったか、
・ここから日本は何を学ぶべきであるかを聴きたかったが触れることなく終わった。

講演のタイトルに偽りありと思っていたが、司会?の方が言われたように「トッド氏は異なる視点で・・」のかもしれない。
家族構造の分析を通して、欧州のコンテンポラリーな問題に対する解、日本へのヒントを期待することは出来無いのではないか、これから何を学ぶのか悩んでしまった。
それは、学者と現場感覚の差であって、そんなことを悩むのは素人だと言うことか。

多くの大学関係者、研究家、霞が関の方々が来られていたが(日本財団の大会議室が満席!)
どのように思われて帰路につかれたのか、素人としてはご意見を伺いたいものです。

第2部
「人口減少社会と移民政策—政策提言に向けて」

目新しいことは殆どなかったが、説明の時間が短かったこともあるかも知れないので評価は資料を読んでからすべきと思う。

移民受け入れに関するシミュレーションについて1点だけ:

移民への日本語教育のコストなどは全く織り込まないのはこの種のシミュレーションでは普通だ、との説明があったがそんなものか。
確かに経済のファクターは多すぎるが、少なくとも受け入れのコストなどの重要ファクターは織り込まねば、何百本ものプログラムを使ったと言っても、結果の利用価値が無い。
移民の人達による経済効果は太田/大泉の例を見ても分かる通り、明らかであるし、これまでも東海3県に於ける経済効果なども発表されている。これらと何が違うのだろう・・。

提案したとたんに「コストも無視していて意味が無い」と叩かれた、自民党議連の「1,000万人受け入れ」提案(2008年)を思い出した。


0 件のコメント:

コメントを投稿