2012/11/25

文化庁 : 文化審議会国語分科会国語課題検討小委員会



昨日、文化庁の文化審議会国語分科会国語課題検討小委員会という
集まりを傍聴させて頂きました。

今回は
(1)言葉遣いについて
(2)コミュニケーションの在り方について
が議事でした。
まだ審議中なのでまとまる前にその内容をお伝えは出来ませんが
在日ブラジル人児童生徒の教育の関係で各地を回った今回の
「カエルプロジェクトセミナー」での経験と重なる部分がありました。
特に今回の「ダブルリミテッド」の保護者・子どもの問題に触れて。

コミュニケーション力とは何か。
コミュニケーションを考えるときこちらの言葉の遣い方や技術
だけでなく、相手の語彙力、理解力をどこまでイメージできるか、
という当たり前のことが、これらの議論の中に明確に含まれていない
のではないかと、思いました。

既にどこかで議論されているのかとは思いますが、
外国に繋がる人々だけでなく、判断力が落ちてくる高齢者が増加する
そう遠くない明日を考えると、発言者を中心とした技術論から相手を
考えた真のコミュニケーションを考える必要があるのではなかと思い
ました。

http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/bunkasingi/kentou_07/gijishidai.html


PS
資料3は新しいもので一部ではありますが、大手企業における
ビジネス・コミュニケーションの状況が分かります。

総務省 : 市区別登録外国人数



登録外国人統計2011年12月末の第8表がやっと出ました。

http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001089591

の下から二番目のものです。

いつも指摘していますが、残念ながら「町」は含まれていません。
つまり、外国人集住都市会議メンバーの群馬県邑楽郡大泉町と滋賀県愛荘町は含まれていません。

それでも参考にしなければなりませんので、それをベースに
上位30位までのランキングを作成しました。ご参考まで。
国籍で異なる集住地区が分かります。

http://tspublic.jimdo.com/data/市区別登録外国人数/

外国人集住都市会議メンバーのデータは

http://www.shujutoshi.jp/member/pdf/2012.04.01sankatosidata.pdf

をご覧ください。こちらの方が新しいデータです。

在日ブラジル人児童生徒の教育 カエルプロジェクトセミナー(長文になりました)


一月ほど前にご案内した案件のフォローです。

10月26日から始まった本年のカエルプロジェクトセミナーは、約三週間の
スケジュールをこなし、終了しました。
関西、北陸、中部、関東・・関わった方々に深謝申し上げます。
講師お二人は本日無事離日されました。
今回、北陸で開催した際には、集まったこと自体に意味があるほど、母語で
話し合う機会が少ない地域もあり、その点でも意味のあるものでした。

出来るだけ保護者に情報が届くように尽力しましたが、まだまだの感があります。
一般に言われるのは:
参加する関心のある家族には問題が少なく、出席しない保護者の家庭が問題だ、
とステレオタイプの表現ですが、今回各地での話合いを通してそれを少し
考え直さなければならないのではないかと思うに至りました。

長くなるので二点だけ報告します。一つは親の責任、もう一つは日本での教育。
(教育の専門家ではありませんが、このセミナーをアテンドしながら皆さんの
やり取りを聞きかじって自分なりに理解したもので、間違っていましたら
私の理解力不足です。)
その他の点については、折に触れてまた報告します。

1.親の責任

�状況
「ダブル・リミテッド」の問題は相変わらずで深刻な状況。

�親の責任・教育力について
*これはあくまで一部の保護者の実態で全体ではないことはご理解下さい。

子供たちの教育に関して、
「親の責任」
と、決めつけてしまう場合が多いが、単純には言えない。
確かに保護者に問題がある場合もあるが、現在子どもを学校に通わせて
いる保護者自身が十分な教育を受けていなかったことがいくつかの例で
明らかになった。
アンジェロ・イシさんの表現を借りれば、在日ブラジル人一世の子供たち
つまり在日ブラジル人二世の中には、当時はブラジル人学校もできていな
かったこともあり、十分な教育を受けていない人も多かった。
また、ブラジルで教育を受けていても小学校までであった場合には
レベルの高いポルトガル語の表現の理解が難しいことが多い。

現在、小学校・中学校に通っている子供たちのうち在日ブラジル人三世は、
この保護者に育てられているが、そのような保護者は結果として
・自分が十分な教育を受けてこなかった保護者は「教育」の重要性を理解
 できていない
・ポルトガル語も小学校レベルから進んでいない場合にはポルトガル語に
 訳されていてもその資料を理解できないことになってしまう。
 (*通訳の方でさ小学校で来日した人はポルトガル語に不安を持っています)

今回、中川郷子さんが出来るだけやさしいポルトガル語で話をしても理解
できて居ない保護者が見られました。

これらの保護者に「しっかり教育せよ」と言っても関心も示さないのは、やりたく
無いのではなく、必要性も理解できないから、と理解すべき。

また、極端に言えば、これらの保護者が彼らの不十分な言葉で子どもを教育
すると逆効果になる恐れさえある。
中川さんは保護者の話は語彙力不足や表現力の問題もあるので、語彙を豊富
にするように本の読み聞かせが良い、と講演で述べられている。(読めれば
であるが)

今回のセミナーのチラシも読めない人もいますし、読めてもその内容が理解
出来ない・・・。これは事実です。従い、チラシを配ったから告知できたと考えず
地道に電話で説得する必要が出てくるのです。

�負の連鎖を断ち切るには
(表現は悪いが)負の遺産を受け継ぐ「連鎖」を断ち切らねばならないが、
それを保護者に頼れない以上、国、自治体、学校、地域でその役割を果たす
必要がある。
つまりシステムの構築が急務。
さも無くば、ダブルリミテッドの子供が10年後に大人になり、アルバイトで
食いつなぎ、最終的には生活保護に頼らざるを得ないような人々を作り出す
ことになる。
今の子供たちが親になると(10年も経たないうちにまた子どもが生まれる)
、また同じ問題が出てくる可能性は大。

これは20年前に改正入管法を導入しながらなんら手を打たなかった「ツケ」
である。

将来大きな問題となる前に今解決すれば逆に両国にとって役立つ人間になり
得るはず。

尚、今回は在日ブラジル人の話が中心ですが、現場では父親がブラジル人で
母親がフィリピン人で家庭内言語は片言の日本語で、母親とはビサヤ語、
父親とはポルトガル語・・と言うような複雑な家庭が出始めているとのことで
更に深刻になってきていると言えます。この過程の子どもの思考能力は
どうなるのだろう・・・。

2.日本での教育
ポルトガル語力不足のためブラジルで苦労していることを聞いて、日本での
教育に自信を失ったと感想を述べられる日本語指導者が何人か居られた。

日本の公立学校に通っている間は基本は日本語で「学ぶこと」「学ぶ楽しさ」
を習得するように指導することが重要。
言語はコミュニケーションの道具だけでなく、思考のベースであり、世界を認識
するための道具としての役割があることを教える側が十分に理解する必要がある。
つまり、単語・言葉だけを教えるのではない、と言うこと。
大変ですが、教師力をもっと磨く必要がある。


昨日のメイルの追加です:

現場でお聞きしているフィリピン人児童生徒の急増の実態から
するともっとフィリピン人が多いと思いますが、これは国籍が日本で
フィリピンにつながりがある子供が増えているのではないか
と推察します。
帰化した人々も含め、外国につながりを持つ人の把握が施策の
ためにも必要だと思います。

2012/11/08

2012/11/06

浜松/ブラジル人 : 浜松に住むブラジル人が大幅減少



ブラジルから来日された中川郷子さんと日本各地を訪問しています。
一昨日は美濃加茂市、昨日は可児市に居ました。

美濃加茂市はソニーの撤退が大きな問題となっており、あるブラジル人学校では
保護者の20名ほどがソニー勤務で、来年3月までに失職することになり、帰国する
ことになると生徒減に繋がる可能性があるのではないかと戦々恐々。派遣会社が
新しい職場を探せるのか・・・。

この記事は一週間ほど前のものですが、浜松の状況のレポートです。



http://mytown.asahi.com/shizuoka/news.php?k_id=23000001210270001


日本で最多のブラジル人が住む浜松市で、2008年秋のリーマン・ショック以降、ブラジル人の人口流出が目立つ。働き場所を失ったことが大きい。
 ■働き場所を失う
 1日現在で同市に住むブラジル人は1万1670人(全人口の約1・4%)。08年1月末のピーク時は1万9515人が登録しており、7845人も減った。
 同市には自動車など輸送用機器産業を始め、多くの工場がある。企業側は人手が足りず、日系のブラジル人たちは「出稼ぎ」を目的に来日した。
 蓄えもでき、家族を呼び寄せ、生活が根付くとそのまま日本で暮らすパターンが多かった。1990年の入国管理法改正で、日系2、3世とその家族には就労制限のない「定住者」の在留資格が認められたことが大きい。
 市によると、90年3月末に1457人だったブラジル人は、5年後には6527人、10年後には1万789人、15年後には1万4377人と急増した。
 しかし、リーマン・ショック以降、企業は東日本大震災や円高などを背景に、人員を削減したり工場を海外移転したりしてきた。雇用形態が不安定なブラジル人らは解雇されたり、雇い止めになったりして失業するケースが増えた。
 働く場が見つからないため、家族とともに帰国する例が増えているという。
 ■ユミちゃん帰国へ「友だち、いっぱいできたのに」
 「友だち、いっぱいできたのに……」。浜松市立芳川(ほうがわ)小2年で、日系ブラジル人4世のイトウユミちゃん(8)は、学校の友だちと鬼ごっこやドッジボールで遊んだことを言いながら目を伏せた。
 母のマユミさん(29)はユミちゃんと次女(5)と長男(1)を育て、両親も加えた6人で同市南区のアパートで暮らす。両親がアルバイトして生活を支えてきたが、マユミさんは子供たちを連れて11月に帰国することを決めた。
 ブラジル育ちのマユミさんは2001年、親を頼って来日。ところが、東日本大震災の影響で、父は勤め先の自動車部品工場をリストラされた。食品加工所で働く母の給料では、ユミちゃんが通うブラジル人学校の毎月の授業料3万円を捻出するのが難しくなった。
 こうした事情を知り、ユミちゃんが日本の学校に通えるよう支えたのが、浜松多文化共生事業実行委員会だった。浜松市の「外国人の子どもの不就学ゼロ作戦」事業を受託している同実行委は、ベトナムで日本語を教えた経験のある女性と、日系ブラジル人女性の就学支援員2人を派遣した。
 「子どもは学校に行きたがっている」「日本の学校について何も分からない」とポルトガル語で訴えるマユミさんに、2人は、公立の学校は授業料が無料であることなどを説明。「日本の子どもとなじめるのか」と不安だったマユミさんを励まし、ユミちゃんは昨年6月に入学した。
 いま、32人の学級で、もう1人の日系ブラジル人の男児とともに学んでいる。日本語や補充学習があるほか、週4日は通訳が来校して支えている。
 マユミさんの父は今年7月、やっと運転手のアルバイトが見つかった。だが将来の不安は消えなかった。
 ユミちゃんは「学校は楽しかった。校長先生も担任の先生もみんな泣いてくれた」。マユミさんは「日本に残りたかったので残念。親切にしてもらって感謝しています」と言った。【高田誠】