2012/11/25

在日ブラジル人児童生徒の教育 カエルプロジェクトセミナー(長文になりました)


一月ほど前にご案内した案件のフォローです。

10月26日から始まった本年のカエルプロジェクトセミナーは、約三週間の
スケジュールをこなし、終了しました。
関西、北陸、中部、関東・・関わった方々に深謝申し上げます。
講師お二人は本日無事離日されました。
今回、北陸で開催した際には、集まったこと自体に意味があるほど、母語で
話し合う機会が少ない地域もあり、その点でも意味のあるものでした。

出来るだけ保護者に情報が届くように尽力しましたが、まだまだの感があります。
一般に言われるのは:
参加する関心のある家族には問題が少なく、出席しない保護者の家庭が問題だ、
とステレオタイプの表現ですが、今回各地での話合いを通してそれを少し
考え直さなければならないのではないかと思うに至りました。

長くなるので二点だけ報告します。一つは親の責任、もう一つは日本での教育。
(教育の専門家ではありませんが、このセミナーをアテンドしながら皆さんの
やり取りを聞きかじって自分なりに理解したもので、間違っていましたら
私の理解力不足です。)
その他の点については、折に触れてまた報告します。

1.親の責任

�状況
「ダブル・リミテッド」の問題は相変わらずで深刻な状況。

�親の責任・教育力について
*これはあくまで一部の保護者の実態で全体ではないことはご理解下さい。

子供たちの教育に関して、
「親の責任」
と、決めつけてしまう場合が多いが、単純には言えない。
確かに保護者に問題がある場合もあるが、現在子どもを学校に通わせて
いる保護者自身が十分な教育を受けていなかったことがいくつかの例で
明らかになった。
アンジェロ・イシさんの表現を借りれば、在日ブラジル人一世の子供たち
つまり在日ブラジル人二世の中には、当時はブラジル人学校もできていな
かったこともあり、十分な教育を受けていない人も多かった。
また、ブラジルで教育を受けていても小学校までであった場合には
レベルの高いポルトガル語の表現の理解が難しいことが多い。

現在、小学校・中学校に通っている子供たちのうち在日ブラジル人三世は、
この保護者に育てられているが、そのような保護者は結果として
・自分が十分な教育を受けてこなかった保護者は「教育」の重要性を理解
 できていない
・ポルトガル語も小学校レベルから進んでいない場合にはポルトガル語に
 訳されていてもその資料を理解できないことになってしまう。
 (*通訳の方でさ小学校で来日した人はポルトガル語に不安を持っています)

今回、中川郷子さんが出来るだけやさしいポルトガル語で話をしても理解
できて居ない保護者が見られました。

これらの保護者に「しっかり教育せよ」と言っても関心も示さないのは、やりたく
無いのではなく、必要性も理解できないから、と理解すべき。

また、極端に言えば、これらの保護者が彼らの不十分な言葉で子どもを教育
すると逆効果になる恐れさえある。
中川さんは保護者の話は語彙力不足や表現力の問題もあるので、語彙を豊富
にするように本の読み聞かせが良い、と講演で述べられている。(読めれば
であるが)

今回のセミナーのチラシも読めない人もいますし、読めてもその内容が理解
出来ない・・・。これは事実です。従い、チラシを配ったから告知できたと考えず
地道に電話で説得する必要が出てくるのです。

�負の連鎖を断ち切るには
(表現は悪いが)負の遺産を受け継ぐ「連鎖」を断ち切らねばならないが、
それを保護者に頼れない以上、国、自治体、学校、地域でその役割を果たす
必要がある。
つまりシステムの構築が急務。
さも無くば、ダブルリミテッドの子供が10年後に大人になり、アルバイトで
食いつなぎ、最終的には生活保護に頼らざるを得ないような人々を作り出す
ことになる。
今の子供たちが親になると(10年も経たないうちにまた子どもが生まれる)
、また同じ問題が出てくる可能性は大。

これは20年前に改正入管法を導入しながらなんら手を打たなかった「ツケ」
である。

将来大きな問題となる前に今解決すれば逆に両国にとって役立つ人間になり
得るはず。

尚、今回は在日ブラジル人の話が中心ですが、現場では父親がブラジル人で
母親がフィリピン人で家庭内言語は片言の日本語で、母親とはビサヤ語、
父親とはポルトガル語・・と言うような複雑な家庭が出始めているとのことで
更に深刻になってきていると言えます。この過程の子どもの思考能力は
どうなるのだろう・・・。

2.日本での教育
ポルトガル語力不足のためブラジルで苦労していることを聞いて、日本での
教育に自信を失ったと感想を述べられる日本語指導者が何人か居られた。

日本の公立学校に通っている間は基本は日本語で「学ぶこと」「学ぶ楽しさ」
を習得するように指導することが重要。
言語はコミュニケーションの道具だけでなく、思考のベースであり、世界を認識
するための道具としての役割があることを教える側が十分に理解する必要がある。
つまり、単語・言葉だけを教えるのではない、と言うこと。
大変ですが、教師力をもっと磨く必要がある。


昨日のメイルの追加です:

現場でお聞きしているフィリピン人児童生徒の急増の実態から
するともっとフィリピン人が多いと思いますが、これは国籍が日本で
フィリピンにつながりがある子供が増えているのではないか
と推察します。
帰化した人々も含め、外国につながりを持つ人の把握が施策の
ためにも必要だと思います。

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