◇移民、先人の足跡たどる
古式捕鯨発祥の地、太地町は、町の歴史や文化を大切にする心を育てる教育を推進するため、小中連携した学習を進めている。小学校は「捕鯨の歴史」、中学校は「移民の歴史」で、総合的な学習の時間を活用し小中9年間で、町民としての基礎教養を育み、語り継いでいこう--というユニークな試みだ。
町立太地中学校(前正則校長、85人)は10年度、「太地の移民」をテーマに、海外に渡った先人の足跡をたどる移民学習を始めた。全国有数の海外移民を送り出した和歌山県。中でも同町は、オーストラリア、米国、カナダに渡った。オーストラリアでは、西海岸のブルームでボタンの原料となる貝を採取する潜水作業に従事。米国とカナダでは、男性は漁師、女性は缶詰工場で働いた人が多かった。
移民学習に取り組むのは3年生24人で、中西健教諭(39)=社会科担当=が指導。昨秋にオーストラリア、米国、カナダの3班に分かれて町内在住の関係者から聞き取り調査した。米国の班は、町公民館に開設された歴史資料室を訪ね、宇佐川彰男館長らから話を聞いた。オーストラリア班は、貝採取に携わった関係者に話を聞いた。近く成果を発表する。
ブルームは町の姉妹都市。中西教諭は一昨年、生徒6人を引率し訪問し、日本人墓地に案内された。広さは同中校庭の半分。墓石に太地や新宮市三輪崎の文字が刻まれ、「私たちの祖先が、こんな遠い異国の地に来て働いていたんだ」と衝撃を受けた。訪問をきっかけに、「移民の歴史を教え、一緒に学びたい、と思った」という。
宇佐川館長は「移民の歴史は明治にあった『背美流れ』と呼ぶ捕鯨操業中の遭難事故にさかのぼる。移民学習は意義があり、協力したい」と話す。【神門稔】
Source: 毎日新聞
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