金融危機(2008年秋)の後、失業者救済を目的に導入された国の「就職安定資金融資」をめぐり、浜松市で不動産業者らが日系ブラジル人約400人に「大金がもらえる」などと持ちかけて計4億円以上の融資を受けさせ、その中から高額の手数料を受け取っていたことがわかった。融資金が返済される見込みは薄く、厚生労働省は調査を始めた。
融資の仲介をしていたのは、浜松市で日系人を対象に賃貸アパートのあっせんや紹介をしている二つの業者。
関係者によると、業者らは08年12月に融資の受け付けが始まると、申請窓口だったハローワーク浜松(同市中区)の敷地内で、求職中の日系人を「生活資金や住まいを用意します」などと誘った。また、ブラジル人向けの無料情報誌に「100万円をもらうお手伝いをします」との広告も掲載した。
業者らの説明によると、融資の受け付けが終わった昨年9月までに約400人が勧誘に応じたという。融資を申請し、交付が認められた額は1人あたり100万円前後で、総額は4億円を超すとみられる。
融資を受けた400人には地元・浜松市のほかに、群馬、山梨、神奈川、愛知県などから呼び集められた数十人も含まれていた。業者は日系人の申請に同行し、書類の記入方法や窓口での受け答えを助言していた。融資が認められると、こうした業務の「通訳料」や住居を紹介するための「礼金」名目で現金を請求していた。業者側の取り分は融資全体の2割前後だったとみられる。日系人からは「だまされた」との訴えが相次いでいる。
浜松市やその近郊には、自動車部品などの製造工場が多く、国内での単純労働が認められている3世までの日系人が多く集まっている。かつては1万9千人以上が外国人登録をしていたが、リーマン・ショック(08年9月)の後は職場を解雇されて社員寮を退去させられ、路上や車内での生活を強いられる日系人が続出していた。
厚労省静岡労働局の担当者は「制度開始時には、ハローワーク浜松にはポルトガル語通訳が1人しかいないなど態勢が不十分で混乱もあった。事態を真摯(しんし)に受け止め、手続きに不正がなかったか調べていく」と述べた。
朝日新聞の取材に対し、業者の一人は「料金についてはそのつど事前に説明している。高いと思うのなら、うちを選ばなければよかった。いろいろと面倒をみて結果を出した。利益を得るのは当然」と話した。(園田耕司、吉田啓、畑山敦子)
LINK: 朝日新聞
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