2011/05/11

不安の正体は原発問題。いま「原発鬱」とも呼ぶべき症状が増加している

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http://diamond.jp/articles/-/12152
■原発事故によるこころのダメージは、チェルノブイリよりも日本のほうが大きい
チェルノブイリ原発事故から、25年がたち・・事故と健康被害の因果関係はまだはっきりとしませんが、現段階で最も深刻なのは、メンタル面の被害だと言われています。
原発事故の影響を受けていないグループと比較すると、うつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症するケースが明らかに多い。25年前には生まれていなかった、直接事故を経験していない子どもたちにも影響が出ているといいます。事故当時、チェルノブイリ周辺にいた親が精神的に不安定になり、その親から事故の話を聞いた子どもたちの心が不安定になっているというのです。
チェルノブイリでは、直接被害を受けた地域の人が避難しなければならないというストレスがありました。それと同時に「目に見えない」「いつ来るかわからない」「いつ終わるかわからない」という不気味さによるストレスが大きかったと考えられています。
今回の福島第一原発の事故でも、ストレスの構造はチェルノブイリと同じです。しかし、いまの日本のほうが、心理面に与えるダメージは大きくなるかもしれないと私は考えています。
■情報があり過ぎることで、日本人は強いストレスから逃れられない
チェルノブイリの事故では、情報伝達手段が少なかった25年前という時代、情報が隠蔽されていた社会主義国家での出来事ということもあって、情報がないことによる恐怖は少なからずあったと思います。ただ、その不安はある意味で限定的だったということも言えるでしょう。
反対に、今回の日本のケースでは、情報があり過ぎることによるストレスが浮き彫りになっています。これまでは、情報が多いほど安心につながると言われていたのに、過剰にあり過ぎるため目を背けることも、逃げることもできなくなっているのです。
内容もまちまちです。その情報のうちどれが正しいもので、どの情報に拠り所を置いていいのかがわからないのです。
この点について、多くの知識人はこう言います。
「自分で情報を取捨選択して、自分なりの理解を形成しなさい」
しかし、高度な専門知識を初めて聞き、そのうえ、人によって言っていることが違っていれば、戸惑うのも無理はありません。私たちは、そこまでメディア・リテラシーが高いわけではないのです。現段階では、より正確な情報を見極めることができないことが、人々の大きなストレスになっています。
■白黒はっきりさせようというこころが、かえってダメージを大きくしている
現代の日本社会は、物事の白黒をすぐにつけたがる傾向にあります。
田中真紀子、鳩山前首相、菅総理、「岡田ジャパン」・・・
大好きか、大嫌いか。熱狂的に支持するか、そっぽを向くか。現代の日本社会は、あまりにも白か黒かをはっきりさせようと急ぎ過ぎて、振れ幅が大きくなっています。以前なら内閣支持率が3割から4割ぐらいの微妙な水準のまま、国民は不平や不満を言いながらも、白黒つけずにジリジリと見守るという状態がありました。しかし、いまは支持か不支持か、とちらかの極に振れると、一気にその評価が決まってしまいます。
「目に見えない」「いつ来るかわからない」「いつ終わるかわからない」不気味な状態の行く末を、冷静に見守る耐性のようなものが弱くなっています。今回の原発事故は、現代の日本社会にとって最も苦手な部分に突き刺さる問題になっていて、それが日本人のこころに大きなダメージを与えているのです。
■原発事故は、誰のこころにもある漠然とした恐怖を顕在化した
特別の原因もないのに、そうした考えを増幅させてしまうのが「被害妄想」です。これがエスカレートすると、すべてのものに毒が入っているのではないかと疑う「被毒妄想」も生まれてしまいます。
どう考えても、いま東京にいる人が放射能の直接的な影響で吐き気をもよおすということはあり得ません。これまでは、特殊な一部の人だけが妄想を抱いたに過ぎませんが、この原発事故によって、かなりの数の人が妄想を抱くかもしれないと考えています。
■やきもきしながらも、こころを落ちつけて見守る以外に方法はない
現在進行中の原発問題は、白か黒かという図式にあてはめることはできません。好転したかと思えば、悪い情報が入ってくる。「一進一退」「三歩進んで二歩下がる」というジリジリとした状況は、いまの日本人が最も苦手とするところだと思います。
現代の日本人は、不確定な情況のなかに置かれることに脆弱になっています。やきもきするのが苦手です。もちろん、やきもきしなくて済むなら、それに越したことはありません。しかし、本来、人生には、自分の思うようにならない情況でひたすら待つしかない情況は山ほどあります。恋愛はその典型で、自分が好きになっても、相手がその気になってくれるかわからない。想いを伝えることができても「少し考えさせてほしい」と言われたら、待つしかありません。こういう情況への耐性が、いまの日本社会は脆くなっていることが、今回の原発事故で浮き彫りになりました。
原発事故は、放射線汚染による人体や環境への影響、さらに地域住民の生活へも多大な影響を及ぼす大きな問題です。また、今後の日本のエネルギー政策についても議論され始めています。それらと共に、原発事故に伴い日本で多くの人が甚大な心理的ストレスを抱えている点も、見逃してはいけません。

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