2010/12/23

日系ブラジル人結束の冬


日系ブラジル人結束の冬
読売新聞

日系ブラジル人が多く住む大泉町。改正入管難民法の施行で集団移住が本格化してから20年の今年、地元の雇用を守ってきた三洋半導体の売却・工場閉鎖が決まるなど、町の景気は一気に冷え込み始めた。職を失い、帰国した日系人も少なくない。だが、残った日系人たちは日本社会に根を下ろそうと踏ん張っている。(片岡直人)
ブラジル人のクリスマスには欠かせない菓子パンの「パネトーネ」と「チョコトーネ」が棚に並ぶ同町坂田のパン店「トミ」。週末はいつもより多い客でにぎわい、店主の松山トミハルさん(45)は休む間もない。
開店1年後、リーマン・ショックで日系人の解雇が相次ぎ、客は2割ほど減った。この2年、松山さんは日本人向けの宣伝に力を入れてきた。「あの時はびっくりした。けど、自分の腕を信じて大丈夫と頑張った。疲れるけど、大切なのはお客へのフレンドリーな態度だよ」と笑顔を絶やさない。
町内のブラジル人の登録者数は11月末現在で4566人。最盛期から1割減った。「彼らは金の卵だったのに」と、日系人の移住を促進してきた大泉国際交流協会長の山口武雄さん(70)は寂しそうに語る。企業からの税収で潤っていた町は、34年ぶりに国から地方交付税を受け取る「交付団体」に転じた。
逆風に立ち向かおうと、日系人たちは結束を強め始めている。11月には「大泉ブラジル商店協会」が発足。町内に約120軒ある日系人の店のうち、松山さんの「トミ」など54軒が加盟する。初の試みとして、今は年末年始キャンペーンを展開。抽選券などを配って客の取り込みに躍起だ。暫定で理事長を務める幕田マリオさん(38)は「店の営業意欲が高まってきた」と結束の効果を語る。
もはや日系人同士の商売は成り立たなくなり、「トミ」の向かいでブラジルレストラン「ロデイオ・グリル」を営む宮崎マルコ・アントニオさん(45)は「もっと日本人客が増えてほしい」と話す。幕田さんは「来年は日系人の店すべてでキャンペーンを展開したい」と張り切っている。
(2010年12月24日  読売新聞


読売新聞


1 件のコメント:

  1. 柴崎@三井物産です

    地元の雇用を守ってきた三洋半導体の売却・工場閉鎖が
    決まった群馬県大泉町のブラジル人の登録者数は
    11月末現在で最盛期から1割減の4566人。
    町の財政も厳しく、34年ぶりに国から地方交付税を受け取る
    「交付団体」に転じました。

    その中で、職を失い、帰国した日系人も少なくない町では
    残った日系人たちが日本社会に根を下ろそうと踏ん張って
    いるとのレポートです。
    寒くなったこの冬を越え暖かな春を迎えて欲しいものです。

    返信削除